ハイクオリティーな楽曲作りをサポートしてくれるソフトシンセ

私も含め、J-Popにおける作曲家のライフワークは作曲コンペに提出するデモ音源を作ること。

私自身も、レコード会社や制作会社から直発注をいただけることはあるものの、大抵の場合、大小様々な作曲コンペに参加し、採用をいただいてリリースに至ります。

なお、作曲コンペに求められるデモ音源のクオリティーはどこでも言われているように「そのままCDリリース出来るクオリティーであることには越したことがない」というのが、やはり現実だと思います。

また、参加している人数が少ないクローズドな作曲コンペともなると、決定率は高くなりますが、実績ある著名な作家さんとの勝負になるので、一切の妥協が出来ない本当にCDリリース出来るクオリティーがある上での、楽曲の良し悪しというシビアな状況になります。

作曲コンペではなく、レコード会社や制作会社からの直発注は…もう…絶対に信頼を裏切らないクオリティーが必要。
自分の曲で万が一コケてしまったら、仕事を失うレベルですし…。

さて、どんどん厳しくなる商業音楽作曲家の世界ですが、当DTM教室でも、近年は作曲コンぺへの参加を目標とする受講生様が増えてきました。

そこで、作曲コンぺに参加し採用実績を持つ現役プロ作編曲家でもある当DTM教室講師が、作曲コンぺはもちろん、お仕事にも対応できるデモ音源を作る上で、それをサポートしてくれるサードパーティーのソフトシンセ(DTMソフトに読み込んで使用する他社製のソフトウェア)を2回に分けて挙げてみたいと思います。

まずは前編です。

Native Instruments KOMPLETE 10

必要なもの全部入りの御用達ソフトシンセ&エフェクト

とにかくこれがないと始まらない…と個人的に思っています。
各DTMソフトには、最低限の楽曲制作が可能なだけのソフトシンセが付属しますが、それだけだと特に弱いのがバンド系楽器/生楽器のシミュレートです。

KOMPLETEは、それを余すことなくカバーしていますし、BATTERYで打ち込み系のドラム音源、MASSIVE等強力なシンセサイザーも付属。
ギターやベースのアンプシミュレーター、Guitar Rigまで…。

即戦力のものがこれだけまとまっているパッケージは他にありませんので、まず最初に買うべきとオススメ出来ます。

なお、ULTIMATE版もありますが、こちらは、ざっくりと言いますと、生楽器系の音源が増えると考えても良いと思います。

個人的には、「音楽機材はケチらない」ということを昔からの失敗で学んでいますので、ULTIMATE版を購入していますが、倍近くの価格差となりますので、その投資を他に回しても良いと思うし、私の使用頻度から考えても、まずはULTIMATE版でなくても十分な気がしています。


FXpantion BFD3

今一番多く聴かれるアコースティックドラムシミュレート音源

個人的には、ToonTrack社のSuperior Drummer 2が一番好きなのですけども、恐らくBFD3ユーザーの方が圧倒的に多いんじゃないか…と思っています。

前バージョンに当たるBFD2も人気でしたが、音が生々し過ぎて、ミックスに苦労する感じがありましたが、BFD3はそのリアルさはそのままに、ミックスしやすい音になっていると思います。

なお、KOMPLETEの中に付属する「Studio Drummer」も良い音がするのですが、とにかくパラアウトとか、書き出しの速さ/しやすさとか、仕事という側面で考えるとスピード感も大切。
そうなると、アコースティックドラム専門音源はやっぱり欲しいと思ってしまいます。

fxpansion BFD 3【USB2.0 Flash Drive版】【March 2016…

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Spectrasonics Stylus RMX “Xpanded”

縁の下の力持ち、即戦力ドラムリズムループ音源集

発売されてからかなり時間が経っているため、Stylus RMX “Xpanded”に収録されているループはあちこちで聴かれますが、やっぱり今でも現役でお世話になりまくりのドラムリズムループ音源。

ループは、今やSONIC WIRE等でダウンロードで買えますし、3,000円ぐらいからとお値段も手頃ですが、種類が多いので、どれを買えば良いかわからない…
あと、試聴できたところで、いざ買っても使えるのは数種類…なんてことも多いため、Stylus RMX “Xpanded”ほどまとまって手に入るドラムリズムループ音源はありません。

なお、Stylus RMX “Xpanded”を使う上で理解しておきたいのは、決してメインのビートを任せる音源ではありません。
特に、歌モノバックに仕込むリズムとしては、使い方に困るような複雑なリズム、特徴的なサウンドのループが多いので、歌の邪魔です。
また、現代的なパンチもあまりない…とにかく雰囲気モノの音源という印象です。

しかし、メインのビートが鳴っている上で、ちょっと一味欲しいという時には大活躍。
手早く雰囲気を作りたい劇伴などではすごく重宝します。

あと、何気にコンガやシェイカーなどの普通のパーカッションのループがどんなジャンル問わず重宝しますので、時短で済ましたい時にも「ないと困る」ソフトシンセです。


Spectrasonics Trilian

ほとんどのベース音色を賄える即戦力ベース音源

ベース音源の定番として長らく君臨してきたTrilianですが、エレキベースのシミュレートとなると、リアルさで言えば最近はAmple Soundのベース音源の方が勝っているような気がしますが、シンセベースやアコースティックベース(ウッドベース)も含めて、ありとあらゆるベースをカバーするソフトシンセとなると、やっぱり現状もTrilianしかないのだろうと思います。
ダブステップやEDMで聴かれる「Sawでフィルター全開!!」というシンセベースになると、MASSIVEやSylenth1に手が伸び、Trilianはサブベースに回る事が多いですが、とにかくオールジャンルを賄えるプリセットの豊富さが魅力。
シンセに詳しい方でしたら、ベースで使われてきた有名なシンセサイザーが幅広くサンプリングされていますので、手早く「moogが欲しい」とか「TB-303が欲しい」とか、そういった希望にもちゃんと応えてくれます。
シンセベースの扱いは、普段からシンセに慣れていない方となると難しく感じる事が多いようなのですが、Trilianは即戦力プリセットが入っている安心と信頼のベース音源ですので、とにかく買って後悔はないと思います。

Synthogy Ivory II American Concert D

アコースティックピアノはこれで間違いなし

アコースティックピアノ音源選びは少し難しいです。
というのも、ポップスに使うアコースティックピアノは、「すごくリアルだから良い」というものでもないからです。
実際、EQやコンプで結構単体だとキツい音にしておかないとオケ中で抜けてこないということも多く、それならばリアル過ぎないピアノ音色の方が良いという考え方もあり…
しかし、ソロピアノや音数が少ない場面になると…Ivory IIはやっぱりリアル…ピアノが上手くなった気分にさせてくれますね。
Ivory IIは何種類か出ており、基本パッケージを購入すると「スタインウェイ」「ベーゼンドルファー」「ヤマハ」と3種類入っていて、非常にお得感がありますが、私はヤマハのピアノの音がそれほど好きではないというのもあり、メーカーサイトで一番印象が良いと思ったIvory II American Concert Dを購入しています。
プリセットを選んだままだと少し地味に聴こえるかもしれませんが…適切にEQとコンプをしてあげるとディストーションギターと闘える音になりますし、劇伴なんかで作ることが多くなる音数が少ない…タッチも弱めの感じの曲だったら、ちょっとIR系の高品位なリバーブを使ってあげれば打ち込みとは思えないピアノになります。
●Synthogy Ivory II American Concert D

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価格:24,624円(税込、送料込)