ジェネレックの集大成の同軸モニターを導入

私は、約9年前にGenelec 8020Bを使い出してから、Genelec 8330AP GLM Studioセットにメインモニタースピーカーを乗り換え、Genelec信者と言えるほど、Genelecのモニタースピーカーを愛用しています。

Genelec 8020BからGenelec 8330Aに乗り換えた時には、低音がきちんと出るので、キックをレイヤーした時の相性の判断がしやすくなったし、コンプのリリースタイムでキックの余韻をコントロールするなんていうことも出来るようになったので、これ以上モニタースピーカーに求めるものはないかな…なんて思っていました。

でも、Genelec 8330Aを5年近く使ってくると、やっぱり気になってくるのは、ジェネレック集大成と謳っているThe Oneシリーズ、同軸モニターです。

ということで、教室兼仕事場でGenelec 8330Aを使っていましたが、自宅のGenelec 8020BをGenelec 8330Aにリプレイスするため、この度教室兼仕事場にGenelec 8331Aを購入することにしたのでした。

Genelec 8331AとGenelec 8330APのスペックの違い

製品名8331A8330A
最大音圧レベル104db SPL104dB
周波数特性45Hz〜37kHz(-6db)
58Hz〜20kHz(±1.5db)
45Hz〜23kHz (-6dB)
58Hz〜20kHz(±1.5db)
クロスオーバー周波数500Hz,3kHz
ユニット構成2x 楕円形ウーファー5 1/8 x 2
5/8インチ + コアキシャル・ミッドレンジ/ツイーターMDC™ 3 ½ / 3/4インチ + DCW™
ウーファー5インチ + ツイーター3/4インチ・メタル・ドーム + DCW™
出力ウーファー72W
ミッドレンジ36W
ツイーター36W
ウーファー50W
ツイーター50W(全てクラスD)
大きさH 305mm
W189mm
D 212mm
(Iso-Pod™ 含む)
H 299mm
W 189mm
D 178mm
(Iso-Pod™ 含む)
重さ6.7kg5.5 kg
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モニタースピーカーを選ぶ際、技術仕様を重視して選ぶというよりかは、結局試聴してどう思うかで決めてはいるものの、前回の8020Bから8330APの買い替えと違い、サイズが変わらない買い替えなので、参考までに見ていました。

大きく違うのは、3ウェイの同軸と、2ウェイのいわゆるクラシックなユニット構成ということですが、周波数特性が若干違うのが興味深いわけです。

人間の可聴域は20kHzまでと言われている訳で、実用上はそこをカバーしていれば問題ないのですが、サンプリングレート96kHzのハイレゾ音源なんて聴けば、CDの44.1kHzや納品フォーマットとして幅広く採用されている48kHzとはもう音は別物なだけに、8331Aでハイレゾ音源を聴いたらどんな感じなんだろう…と、純粋興味が沸きますね。

Genelec 8331Aの凄さはここにあった

定位がハッキリクッキリ

8331Aのレビューで見かけるのは定位が見えやすいということでしたが、私も全く同じ感想です。

もう少し具体的にいうと、DAWのミキサーで、あるトラックをPan L5、もうひとつのトラックL10にした場合でも音が分離していることがわかる…モニタースピーカーを使っているにも関わらず、ヘッドフォンの精度で定位がハッキリクッキリするのには恐れ入りました。

これが同軸スピーカーの位相の良さと呼ばれるものなのでしょうか…

音の前後が見える

恐らく前項の定位が見える、位相が良いという点が絡んでいると思うのですが、空間の再現力が8330Aよりも8331Aの方が高いです。

これにより、音の前後が本当に見えやすくなっています。

これは単純にリバーブの深い浅いという話ではなく、コンプのアタックタイムとEQで、ステレオ空間の中で前後左右に音を配置しようとした時に、もう少し前に出して…これはもう少し奥に…なんていうことがシビアに追い込めるということ。

なので、8331Aは一応モニタースピーカーという括りのものですが、セッティングして最初に聴いたのがたまたまビリー・アイリッシュのYour Powerだったのですが、もう聴いてて楽しくてしょうがない。

左右に広げられたアコギと深めのリバーブがかかったビリーのボーカルのバランスが最高で、深くリバーブかかっているんだけど、モコモコにならないように処理されていて、エンジニアリングのレベルの高さを堪能。

これもモニタースピーカーから出ている音が少しでもぼやけてしまったら気がつかないんだろうから、自分のミックスのクオリティーを上げるためにはこのクラスのモニターで良い音楽を聴かないといけないな…と戒めにもなりました。

長時間聴いても疲れないということを実感

The Onesシリーズは、制作での迅速で一貫性ある判断を提供するだけでなく、リスナーの疲労感の原因となる不自然なイメージングを最小限に抑えるため、従来のスピーカーに比べて長時間のリスニングが可能。

Genelec 8331Aの製品紹介ページより

楽器屋の試聴などじゃわからなかったのが、製品ページに書いてあるこの謳い文句です。

今のところ私の解釈では、Genelecに言われる「元気な音」という点に対して、改善を加えてきたよっていうことなのかなと思いました。

Genelecモニターの全体的なイメージは、低音がすごく出て、高域はきらびやかというドンシャリなイメージだと思うのですが、音量を上げていくと高域が飽和してきて、確かにうるさい印象になってくるというのは8330Aでも8020Bでも感じていました。

それでも、本当にドンシャリチューニングされているリスニングスピーカーに比べれば、モニタースピーカーに求められる原音忠実の範囲内だと私は思っているものの、8331AもGenelecの音だなと、普段他社のモニターを使われている方なら思うと思います。

8331Aでも、Genelecらしい高域がきらびやかに聴こえます。

8331Aは、The Oneシリーズの中では一番サイズが小さいものの、低音再生能力に不満があるかと言えばそうでもないため、やっぱり、サイズを超えた低音再生能力を持っている…すなわち、やっぱり「元気な音」がします。

でも、狭い音場でギャンギャン鳴っていたら確かに「痛い」「うるさい」という印象にもなりかねないものの、空間再現能力がアップしているからこそ、高域のきらびやかさは解像度の高さと言い換えられるわけなので、Genelecモニターでこれくらい高域出ていれば他でも大丈夫という自分の中で作り上げてきた基準を変える必要もなく、自然にモニタリング出来ます。

ほぼ毎日10時間近く、8331Aの音を聴いていますが、これが疲れないということなのかな…と感じていることだったりします。

GLMがとにかく素晴らしい

GLMソフトウェアによる左側スピーカーの補正内容
GLMソフトウェアによるLch側の補正内容
GLMソフトウェアによる右側スピーカーの補正内容
GLMソフトウェアによるRch側の補正内容

これは8330Aでもそうでしたが、GLMによる音響補正は自然で、本格的な音響管理が出来ない環境でも安心してミックスが出来るこの補正効果は素晴らしいです。

実際、当DTM教室では、130Hz付近にピークがあるせいで、ベースが実際よりも大きく聴こえてしまうことから、低域についてはヘッドフォンを併用する必要がありましたが、8330Aを使い出してからベースのバランスがとりやすくなったのです。

これは8331Aでも同じで、低域は無指向性と言われますが、それでも定位がクッキリハッキリするという同軸スピーカーの特性からか、感じ方がタイトになっている分、GLMの音響補正はさらに効果テキメンです。

GLMソフトウェアについては別記事でもレビューしております

次ページでは、8331Aに変えて戸惑った点、購入をおすすめする方についてご紹介します。

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