GENELEC GLMとは?

GENELECのモニタースピーカーのラインナップの中で、「SAM」と製品名に付くシリーズがあります。

この「SAM」はSmart Active Monitorの略で、音響補正機能を持つ製品に与えられ、品番で言うと83xxと、百の位に「3」が入るシリーズに使用出来ます。

同様のことが出来るプラグインでは、Sonarworks SoundID Reference(旧Reference 4)がありますが、DAWで使用する際はマスタートラックにインサートして使う仕組みになっているため、書き出しの時にはバイパスしなければならないことや、ポストインサートの仕組みがないLogic Proになるとマスターの音量がミキサー上で把握できなくなるといったことが起きるため、使い勝手の面でめんどくさいな…と思うこともあります。(Sonarworks SoundID Referenceの補正効果は素晴らしいし、ユーザーインターフェースや設定方法、仕組みはよく考えられているのですが…)

反面、GENELECのGLMによる音響補正は、モニタースピーカーでなされているため、音響補正されていることを特別意識することなく使用出来るのがメリット。

私は自宅で8330A、教室兼仕事場では8331Aを使っており、GLMで補正した音で普段制作をしていますが、非常に気に入っています。

GENELEC GLMがVer.4.1に無償アップデートとその内容

GLM Ver.4.1ユーザーインターフェース
GLM Ver.4.1画面

そんなGENELEC GLMが先月Ver.4.1に無償アップデートしました。GLM Ver.4.0は、ようやくmacOS CatalinaとmacOS Big Surに対応したのが私にとって一番大きなトピックスでしたが、Ver.4.1になり、Ver.3との大きな違いを打ち出した内容になっています。

キャリブレーションアルゴリズムがAutoCal 2にアップデート

キャリブレーションアルゴリズムがAutoCal 2にアップデートされました。

GLMは元々8331Aの音を無響室で測定した結果と、自分の環境で測定した結果を比較して補正をしてくれていましたが、直接音と反射音をより迅速かつ正確に識別することが出来るようになったので、 補正効果が向上しているとのこと。

しかも、キャリブレーションに使うマイクをシリアルナンバーで管理しており、そのマイクの特性まで測定に反映しています。

正直、キャリブレーションに使うマイクの見た目は安っぽいマイクですし、本体とミニピンジャックで繋ぐような仕組みなので、Sonarworks SoundID Referenceに付属するようなコンデンサーマイクと比べれば、精度に懐疑的になってしまうわけですが、システムトータルで見ればよく出来ているわけですね。

なお、補正の時にはスイープ音をスピーカーから発音し、それをマイクで拾うという流れ。

マイクにはスピーカーから直接マイクに届いた音と、壁に反射した音のその両方が入ってきますが、数ms単位で遅れてくる反射音を識別出来るのはすごいことですし、期待が持てます。

ポジティブゲインへの調整機能とフィルターの数の増加

ポジティブゲインとは、+方向の補正のこと。

今までGLMの補正はカット方向にしか効かなかったのですが、ブーストもするようになりました。

確かにGLMによる補正後はスッキリとした音になるというイメージでしたが、カットEQばかりだと音が痩せるとも言えるので、フラットに近づけるためにディップになってしまっている周波数についてはブーストも行うというのは理にかなっていると思います。

また、補正精度向上は、補正を行うフィルターの数の増加という形で進化していることが伺えます。

計測速度が4倍に

Sonarworks SoundID Referenceのストレスポイントは、マイク測定ポイントが多く、終わるまでに15〜20分はかかること。

キャリブレーションにかかる時間が長いと、「こんなんで大丈夫なのかな…」と不安になったり、物音を立てないように神経を使ったりと、心配になるユーザーも多くなると思います。

その点、キャリブレーションのフローはよく考えられていて、誰でも失敗がないように…とSonarworks SoundID Referenceの開発者の方はすごく気を使って下さっていると思います。

ただ、GLMの強みは、Ver.4.1にアップデートされる前からキャリブレーションにかかる時間が早かったのです。そこが嬉しいポイントでした。

Sonarworks SoundID Referenceに比べたら本当にあっさりしたもの…それでもやっつけ仕事でも何でもなくて、満足の行く計測結果を出していたのですが、さらに早くなり、実際計測しましたが、待たされているという感覚もなくあっという間に終わりました。

これは、サラウンドを組むようなスタジオには喜ばれるアップデートですね。

次ページではGLM Ver.4.0とGLM Ver.4.1の補正結果の比較した結果をご紹介します。

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